スカイライトチューブの活用


~ 概日リズムを意識した健康的な空間づくり ~

画一的な尺度の建築空間から人を意識した空間へ

 

建築空間を「基準」という尺度で画一化し、無菌化を推し進めることにより、病気や騒音、不快感を締め出してきたのが近代建築ですが、一方ではストレスや感受性の低下、シックハウスといった人間の健康にかかわる新たな問題も生み出してきました。

 

これは、利便性や合理性と人の生体リズムの関係性の難しさを表しているともいえます。

 

ハードとしての経済性や効率性だけでなく、空間を利用するヒトに対して、どのような価値を提供できるのか、健康維持にとって何が必要なのかなど、建築空間がつくりだす物理環境以外にも生活環境に対する責任や価値が求められているといえるでしょう。

 

今後は、うつや睡眠障害などの生体リズムに考慮した、人を意識する建築空間の重要性は増していくものと思われます。

 

「CO2の削減」が建物性能の重要な指標であることは間違いありませんが、「人に対する価値」への要求とは二律背反する面も少なくないことから、「CO2の削減」と「人へ価値・品質の向上」の両立は、これからの建築空間が達成しなければならない必要条件でもあるといえます。

 

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人と自然の関係性の遮断

 

屋内で多くの時間を過ごす現代の私達は、日々の生活の中で太陽の位置を意識することも、窓を開けることもなく、一定の状態で過ごせるようになりました。

 

季節や自然のリズムとは関係なしに、安定した快適な空間で活動することが少なくありません。

一般的な建築環境は、自然環境の状況や変動からの影響を遮断し、室内に安定した均一の環境を作り出すことを狙いとしているからです。

 

しかし、自律神経系の機能低下により「汗をかく」などの体温調節が適切に行えない子どもの増加が問題になったり、睡眠障害が増えたりと、このような過度に制御された環境が人に与えるネガティブな影響が懸念されています。

 

眠らない都市の明るさを遮断する遮光カーテンは、眠る上では重宝されていますが、光を遮られた外と内では自然のリズムも遮断されることから、朝の目覚めが悪くなるのですが、その理由は分からないまでも、多くの人が経験していることです。

 

建築環境がつくる快適性が、人の持っている生体リズムと異なる場合もあるということです。

 

 

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現代社会がつくりだす睡眠障害

 

平成29年度のノーベル医学生理学賞は、体内時計の仕組みを明らかにした米国の3人の学者が受賞しました。

 

「概日リズムをつかさどる分子的な仕組みの解明」が受賞内容で、5人に1人が睡眠障害といわれている現代社会において多くのことを暗示させています。

 

人は、誰でも体内時計を備えており、1日の生活のリズムをつくっています。しかし、24時間周期の生体リズム(概日リズム)と実際の生活パターンのズレが起きることによって、健康上の様々な問題を生じさせることが分かっています。

 

睡眠障害もそのひとつです。

特に、室内に閉じこもりがちな高齢者は体内時計が不安定になっている現実があります。

その結果、概日リズムが昼夜逆転することもあり、高齢者の概日リズムをいかにして好適に保つかは、介護者にとっても高齢社会にとっても大きな課題だといえます。

 

このことは、建築空間が均質で変化しない空間ではなく、人本来の生体リズム(概日リズム)に合わせて室内の照度や採光を考慮することで、昼間の覚醒~夜間の熟睡といった生活リズムを整えることが求められていることを物語っています。

 

人は自然のリズムで成り立っていることから、概日リズムを意識した建築空間の重要性は今後注目されていくものと思います。

 

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体内時計によって出来る私たちの活動

 

体内時計の役割には、三つあるといわれています。

 

一つ目は、活動時間帯の切り分けで、時間帯による活動区分をできること。

 

二つ目はエネルギーの効率的な使用で、生存力をあげるためにエネルギー変換効率を上げること。

 

三つ目は日長(昼の長さ)の認識で、体内時計の時刻をリファレンスすること、植物の開花、太陽を用いた蜂の方角認知、渡り鳥の渡りや生殖活動などもこれにあたります。

 

体内時計は生物が生きて行くための根源的な装置で、太陽光によってコントロールされています。そういう観点から建築空間における採光はとても大切なことです。

 

この体内時計の働きが不安定になると概日リズムに障害がきたします。

 

睡眠や覚醒のメカニズムが、この概日リズムと深く関わっていることはよく知られているところですが、血圧と体温の調整やホルモンの分泌などの生理現象も概日リズムに沿って営まれています。

 

そのため、概日リズムの不安定は、睡眠障害をはじめ、がんや生活習慣病、精神疾患などにも関わるとされ、時計遺伝子の解析とともに、近年研究が進んできた分野です。

 

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体内時計を働かせている自然光

 

体内時計にもっとも有効なのが自然光ですが、季節による環境の変化に人間が対応できるのも体内時計のおかげです。

 

人間も基本的には動物なので、日照時間の長い夏は活動的になり、睡眠時間が短くなります。

反対に日照時間の短い冬は、活動性が落ち、睡眠時間が長くなります。

 

体内時計が、2~3ヶ月も前から環境に対応する準備をしているので、人間は季節によって日照時間が変わっても、日中は活動し、夜には自然と眠くなるという生活を送れるのです。

 

外に出て、太陽の光を浴びて、思いっきり背伸びをする……不思議なことに元気が出るものですね。

 

「自然光」と「運動」は生体リズムを活発にしてくれます。

「日あたり」は「水」と同じように、かけがえのない恵みということです。

 

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自在に採光できるスカイライトチューブ

 

大切な自然光を自在に採光でき、日あたり問題を簡単に改善してくれるのが、「スカイライトチューブ」です。

 

「太陽光照明」と呼ばれる自然光の採光による照明システムで、日あたりの悪さを劇的に改善でき、自然光を欲しいところに運んで明るく照らします。

築後でも手軽に取り付け可能で、一般住宅以外の倉庫や工場などでも設置できます。日中電気を使わないので、CO2の削減や停電対策にも役立ちます。

 

例えば、窓や光量の取れない室内、住宅密集地域の2階建て住宅の1階など、間取りを犠牲にせずに日当たりだけを解決することができます。

 

自然光は、演色性が良く、室内が見やすく、光にストレスがないので快適です。

 また、天窓の欠点だった紫外線や熱の持ち込み、結露などの心配もありません。

 

「日当たり」は、住いの立地や価格に比べると軽視されがちな条件ですが、生活するにあたっては、健康問題にも関係してきますので、大変重要なことです。